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大阪地方裁判所 平成8年(ワ)12627号 判決 1998年6月29日

原告

松宮祥介

被告

大木勝彦

ほか三名

主文

一  被告大木勝彦は、原告に対し、金三九万一八二六円及びこれに対する平成六年三月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  被告三井こと玄利光は、原告に対し、金二四万二二四六円及びこれに対する平成六年三月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

三  被告榮井新二郎は、原告に対し、金九万三二二九円及びこれに対する平成六年三月一二日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

四  原告の被告際孝治に対する請求及びその余の被告に対するその余の請求をいずれも棄却する。

五  訴訟費用は、原告、被告大木勝彦、同三井こと玄利光及び同榮井新二郎に生じた費用のそれぞれ一〇分の九並びに同際孝治について生じた費用についてはいずれも原告の負担とし、原告に生じたその余の費用は被告際孝治を除く被告らの負担とし、被告大木勝彦について生じたその余の費用は被告大木勝彦の負担とし、被告三井こと玄利光について生じたその余の費用は被告三井こと玄利光の負担とし、被告榮井新二郎について生じたその余の費用は被告榮井新二郎の負担とする。

六  この判決は、第一項ないし第三項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告らは、原告に対し、各自金一〇一四万〇八一九円及び平成六年三月一二日から支払済みに至るまで年五分部の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、原告が、九か月間に計四回にわたって被告らがそれぞれ運転する加害車両に追突される事故に遭って受傷したと主張し、右各追突が共同不法行為になるとして、民法七〇九条、七一九条に基づき、被告ら各自に対して損害賠償を請求している事案である。

一  争いのない事実等(証拠により容易に認定しうる事実を含む。)

1  交通事故の発生

(一) 第一事故

(1) 日時 平成五年六月一一日午後一一時三〇分ころ

(2) 場所 大阪府東大阪市長田東五丁目一〇番先路上(大阪中央環状線)

(3) 加害車両<1> 普通乗用自動車(なにわ五八ろ七三八五)

右運転者 被告大木勝彦(以下「被告大木」という。)

(4) 被害車両<1> 普通貨物自動車(大阪四四て二〇三五)

右運転者 原告

(二) 第二事故

(1) 日時 平成五年七月三一日午後三時一〇分ころ

(2) 場所 大阪府寝屋川市太間東町二三番五号先路上(国道一号)

(3) 加害車両<2> 普通乗用自動車(神戸五四ま六六〇七)

右運転者 被告際孝治(以下「被告際」という。)

(4) 被害車両<2> 普通乗用自動車(なにわ五六な六九二七)

右運転者 原告

(三) 第三事故

(1) 日時 平成五年九月一一日午後一〇時四〇分ころ

(2) 場所 大阪府東大阪市俊徳町一丁目二番一九号先路上(大阪東大阪線)

(3) 加害車両<3> 普通乗用自動車(なにわ五七て九七一)

右運転者 被告三井こと玄利光(以下「被告玄」という。)

(4) 被害車両<3> 被害車両<1>に同じ

右運転者 原告

(四) 第四事故

(1) 日時 平成六年三月一二日午後〇時二〇分ころ

(2) 場所 大阪市生野区林寺二丁目一九番一七号先路上(国道二五号)

(3) 加害車両<4> 普通乗用自動車(なにわ五六と九四四七)

右運転者 被告榮井新二郎(以下「被告榮井」という。)

(4) 被害車両<4> 被害車両<1>に同じ

右運転者 原告

2  原告の入通院の状況

(一) 第一事故後

(1) 平成五年六月一二日から同月二一日まで河内総合病院に通院(実通院日数三日)

(2) 平成五年六月二四日から同年七月二九日まで片上外科に通院(実通院日数一五日)

(二) 第二事故後

(1) 平成五年七月三一日から同年八月一一日まで、平成五年九月五日から同月一一日まで鶴見緑地病院に通院(実通院日数八日)

(2) 平成五年八月一二日から同年九月四日まで鶴見緑地病院に入院(二四日)

(三) 第三事故後

(1) 平成五年九月一二日から同年一〇月一二日まで八戸の里病院に入院(三一日)

(2) 平成五年一〇月一三日から平成六年三月一二日まで八戸の里病院に通院(実通院日数七八日)

(四) 第四事故後

平成六年三月一二日から同月二二日までアエバ外科に通院(実通院日数四日)

3  損害のてん補

原告は以下の通りの支払いを受けた。

(一) 被告大木の自賠責保険から五四万八四〇二円(乙五)

(二) 被告際の損害保険会社から九五万〇四一〇円(甲二の4ないし8、丙五)

(三) 被告榮井から治療費として五万一一九〇円(戊四、五)

(四) 被告榮井の任意保険会社から治療費として二万二六九一円(戊四、五)

二  争点

1  第一事故の状況・被告大木の過失・過失相殺

(原告の主張)

第一事故は、被告大木が信号待ちのために停止していた被害車両に追突して起こったもので、原告は上体が後ろに反り返るような衝撃を受けた。加えて、被告大木は、事故当日酒気を帯びて運転していた。したがって、第一事故は被告大木の一方的過失によって発生したものというべきである。

(被告大木の反論及び主張)

第一事故による加害車両<1>の損傷は、バンパーのところのみで大した損傷を生じておらず、被害車両<1>に対する衝撃は小さかった。また、第一事故当時原告はシートベルトを装着しておらず、このことが原告の損害を拡大させる結果となったものである。

2  第二事故の状況・被告際の過失・過失相殺

(原告の主張)

原告が被害車両<2>を運転して、国道一号線を進行して第二事故現場付近にさしかかったところ、同所では停止信号により交通渋滞中であったため、原告は被害車両<2>を渋滞している先行車に続いて停止させたところ、高速道路から国道一号線へ下りてきた被告際運転の加害車両<2>が被害車両<2>の後部に追突した。そのため、原告は上半身が反り返るような衝撃を受けて、頸部と腰部、とりわけ頸部に激痛が生じた。

(被告際の反論及び主張)

本件事故態様は、被告際が時速一〇キロメートル前後で進行中、急に被害車両<2>が停車したために、加害車両<2>が被害車両<2>に追突したというものであって、追突の衝撃もほとんどなかったといえる程度のものであり、上半身が反り返るほどのものであることは到底あり得ない。また、原告には第二事故当時シートベルトを装着しておらず、このことが原告の損害を拡大させる結果となったものである。

3  第三事故の状況・被告玄の過失・過失相殺

(原告の主張)

原告は、被害車両<3>を運転して第三事故現場付近で信号待ちのため停止していたところ、被告玄運転の加害車両<3>が被害車両<3>の後部に追突した。その際、原告は激しい衝撃を受け、頭部をフロントガラスに打ち付け、さらに上半身が反り返るような状態になった。

(被告玄の反論及び主張)

第三事故の態様は、第三事故現場付近で被害車両<3>の後方に、加害車両<3>が信号待ちで止まっていたが、被害車両<3>が四ないし五メートルくらい前進したので、被告玄も信号が変わったと思い前進したところ、披害車両<3>が突如停止し、被告玄もそれに気づいて急ブレーキを踏んだが、自車前部をかすかにコツンと被害車両<3>の後部バンパーに当ててしまったというものである。したがって、被告玄に過失はない。また、原告は第三事故当時シートベルトを装着しておらず、このことが原告の損害を拡大させる結果となったものである。

4  第四事故の状況・被告榮井の過失・過失相殺

(原告の主張)

原告は、被害車両<4>を運転して、本件第四事故現場付近の交差点手前で右折するために先行車に続いて停止していたところ、後続していた被告榮井運転の加害車両<4>が左側に車線変更しようとして左にハンドルを切って進行しようとして急発進し、加害車両<4>の右前部を被害車両<4>の後部に追突させた。

(被告榮井の反論及び主張)

被告榮井が左折しようとして急発進した事実はない。第四事故は停止していた被害車両<4>が発進後急停車したところに加害車両<4>が追突したものである。また、原告は本件事故当時シートベルトを装着しておらず。このことが原告の損害を拡大させる結果になったものである。

5  各事故と症状との因果関係及び共同不法行為の成否

(原告の主張)

原告は、第一事故に遭うまでは健常な体であって、元気に杭打ち作業や自動車運転等の業務に従事してきたものである。ところが第一事故に加えて、第二ないし第四事故に遭ったために、原告は、頸部、腰部、頭部等の各症状を呈したものである。原告の症状は、第一ないし第四事故のいずれかによって発生したものであり、各事故の間には客観的な関連性があるので、被告らの行為は共同不法行為となる。

6  原告の損害

(原告の主張)

(一) 治療費 合計二〇一万九五八九円

(1) 河内総合病院 六万五三七〇円

(2) 片上外科 一一万五九四〇円

(3) 鶴見緑地病院 七四万四〇一〇円

(4) 八戸の里病院 一〇二万〇三八八円

(3) アエバ外科 七万三八八一円

(二) 入院雑費 七万一五〇〇円

入院五五日間にわたり一日あたり一三〇〇円が相当である。

(三) 通院交通費 一〇万円

(四) 休業補償 四四四万九七三〇円

原告は、本件事故当時、株式会社昌英ほかに勤務してコンクリートミキサー車の運転等の業務に従事していたが、事故前三か月間の平均月収は四四万四九七三円となる。また、本件事故によって休業を余儀なくされた期間は、平成五年六月一一日から平成六年四月中旬までの一〇か月間である。

(五) 慰謝料 二五〇万円

(六) 弁護士費用 一〇〇万円

(七) まとめ

よって、原告は、被告ら各自に対し、原告の蒙った損害合計金一〇一四万〇八一九円及び最後の事故日である平成六年六月一二日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

(被告大木の主張)

被告大木は、原告に対し、自賠責保険からの支払いの他、見舞金名目で五万円、治療費・交通費名目で一二万円の合計一七万円を支払った。

第三当裁判所の判断

一  争点1(第一事故の状況・被告大木の過失・過失相殺)について

1  前記争いのない事実等(第二の一)、証拠(甲一の1、2、四の1ないし4、五の1ないし3、六、乙一、二、原告本人及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(一) 第一事故発生現場の概況は別紙図面<1>のとおりである。同現場は、片側三車線の大阪中央環状線の北行き中央車線上であって、第一事故現場の北側には信号機によって交通整理の行われている交差点がある。

(二) 原告は、被害車両<1>を運転して、第一事故現場付近の中央車線上において信号待ちのために停止していた。他方、被告大木は加害車両<1>を運転して被害車両<1>に後続して走行していたが、本件事故現場直前で後部座席に同乗していた友人との会話に夢中になり、一瞬脇見運転となった。その後、被告大木は本件事故現場の手前三メートル付近にいたって目前にある被害車両<1>を発見して直ちに急制動をかけたものの間に合わず、同車両の後部に加害車両<1>の前部を衝突させた。被害車両<1>は車高の高い普通貨物自動車であったが、衝突の衝撃により、約五〇センチメートル動いて停止した。本件事故後、原告は河内総合病院において診察を受け、外傷性頸部症候群、腰部打撲と診断された。

(三) 以上のとおり認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。被告大木は、加害車両<1>は被害車両<1>にコツンと当たった程度であり、衝撃はあるかないかわからない程度だったと主張するが、甲第一号証の2にある被害車両<1>が衝突後約五〇センチメートル移動した旨の記載は、被告大木の指示説明にもとづく測定の結果であるから信用性が高く、右記載に反する被告大木の主張は採用することができない。また、被告大木は、原告が第一事故当時シートベルトを装着していなかった旨主張するが、この点を裏付ける証拠はなく、かえって約五〇センチメートルほど車が押し出される事故だったにもかかわらず、原告の頭部に何ら外傷が生じていないこと(甲一の4、5)からすれば、原告は第一事故当時シートベルトを装着していた可能性が高いといわざるを得ない。

2  右に認定の事故状況によれば、第一事故は被告大木の前方不注視の過失によって生じたものと認められ、原告には過失相殺としてしんしゃくすべき事情があったとは認められない。

二  争点2(第二事故の状況・被告際の過失・過失相殺)について

1  前記争いのない事実等(第二の一)、証拠(甲二の1ないし3、六、丙一、二、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(一) 第二事故発生現場の概況は別紙図面<2>のとおりである。同現場は市街地を南北にほぼ直線に延びる片側二車線の国道一号線の北行第二車線上であって、第二車線の幅は三・四メートルである。

(二) 原告は、被告大木を同乗させて、被害車両<2>を運転して第二車線を北上し、本件事故現場付近で、同車両を渋滞のため停止していた先行車両に続いて停止していた。他方、被告際は、加害車両<2>を運転して、被害車両<2>の後方約一メートルを追従して、第二車線を北上していたが、本件事故現場の手前一八・八メートル付近において脇見を始め、前方の被害車両<2>が停止したのに気づかず、同車両後部に自車前部を衝突させた。その衝突の衝撃により被害車両<2>は約一・八メートル前方に押し出された。なお、第二事故の際、原告はシートベルトを装着していなかった。本件事故の後原告は鶴見緑地病院において診察を受け、頸部捻挫、腰部捻挫との診断を受けた。

2  被告際は、第二事故の衝突態様は、「コツン」と当たった程度で衝撃があったかどうか分からないくらいであったと主張し、これに沿う証拠(乙ニ、丙二)もあるが、甲第二号証の2の記載は、本件事故から約一時間二〇分しか経過していない時点で施行された実況見分において、被告際の指示説明をもとに記載されたものであるから、これと食違う被告際の丙第二号証の陳述は信用性が低いといわざるを得ないし、かえって、被害車両<2>の修理費用は一三万六八〇〇円を要していると認められること(丙一)、本件事故当時同乗していた被告大木も、本件事故により病院に行って診察を受けていることからすれば(丙三の3、4)、事故の衝撃はそれなりにあったことが推認されるのであって、衝撃がほとんどなかったという右の主張及び証拠を採用することはできない。他に、前記1認定を左右するに足りる証拠はない。

3  前記1で認定した事故状況からすると、第二事故は被告際が車間距離を十分にとらず、かつ前方を注視していなかったために生じたものと認められる。しかしながら、他方、原告としても第二事故当時シートベルトを装着していなかったという落ち度が認められ、右認定の原告の本件事故による受傷状況に照らすと、このことが原告の損害を拡大させる原因の一つになったものというべきであるから、一方的に被告際のみをとがめるのは公平を失するというべきであり、本件においては、過失相殺として、第二事故によって原告に生じた損害から一割を控除するのが相当である。

三  争点3(第三事故の状況・被告玄の過失・過失相殺)について

1  前記争いのない事実等(第二の一)、証拠(甲三の1ないし3、六[一部]、丁八、九、検丁一ないし三、原告本人[一部]及び弁論の全趣旨によれば以下の事実が認められる。

(一) 第三事故現場付近の概況は、別紙図面<3>のとおりである。第三事故現場は西へ延びる道路(以下この項において「東西道路」というときはこの道路をさす。)及び北西に延びる道路等によって構成されている変形交差点(俊徳町一丁目交差点)(以下「第三事故交差点」という。)であり、信号機による交通整理が行われている。第三事故交差点は市街地にあり交通量は普通である。

(二) 原告は、被害車両<3>を運転して東西道路を東進し、第三事故交差点手前で信号待ちのために停止していた。被告玄は加害車両<3>を運転して同じく東西道路を東進して本件事故現場付近に至り、被害車両<3>に続けて自車を停止させた。その後、信号が青に変わり、被害車両<3>が前進し始めたため、被告玄も自車を前進させ始めたところ、突然何の危険もないにもかかわらず被害車両<3>が停止し、被告玄は急制動の措置を講じたものの避けきれず自車前部を、被害車両<3>の後部に衝突させた。しかしながら、右衝突にもかかわらず被害車両<3>はほとんど動いていない。なお、第三事故の際原告はシートベルトを装着していなかった。本件事故の翌日原告は八戸の里病院で診察を受け、頭部外傷、頸椎捻挫、腰部挫傷と診断された。

2  原告は、信号は青に変わっておらず、被害車両<3>は急停止していない旨の主張をし、これに沿う証拠(甲六、原告本人)もあるが、第三事故発生当時、被害車両<3>は停止線を越え、その先端部が横断歩道にさしかかった地点にあったと認められるところ(甲三の2)、特段の事情のない限り信号待ちをするためにそのような地点にまで進出して車を止めることはなく、本件ではそのような特段の事情があったとは認められないのであるから、単に信号待ちのために右のような地点に車両を停止させていたことを前提とする原告の供述はこれをそのまま直ちに信用することはできないといわざるを得ないし、原告の指示説明による実況見分が行われていないこと(原告本人)に徴すると、原告は、事故直後の警察での事情聴取の際、「信号は変わっておらず、被害車両<3>は急停止していない。」との供述をしていなかったものと推認されるから、この点も合わせ考慮すると、急停止をしたことはない旨の右の原告の主張及び甲六の記載は採用することができない。さらに、原告は第三事故当時シートベルトを装着していた旨主張するが、原告のこの点に関する記憶は曖昧であり(原告本人)、しかも右認定のとおり原告は本件事故によって頭部に外傷を負っているのであり、原告のこの点に関する主張も採用することはできない。他に、前記1の認定を左右するに足りる証拠はない。

3  前記1で認定した事故状況からすると、本件は、被告玄が前を走行している被害車両<3>との車間距離を十分に保持しないまま漫然前進を開始したことによって生じたものと認められる。しかしながら、他方、原告においても交差点付近においては急停止した場合の追突事故の危険性が通常の路上に比べてより高く、いったん進行を開始した後に不用意に急停車すれば、後続車が追突する危険のあることは容易に予見できたのであるから理由のない急停車は厳に慎むべきであったのに不用意な急停車をした過失及びシートベルトを装着していなかった過失があったものと認められる。したがって、本件においては原告及び被告玄の双方の過失を比較し、過失相殺として第三事故によって原告に生じたと認められる全損害から六割を控除するのが相当である。

四  争点4(第四事故の状況・被告榮井の過失・過失相殺)について

1  前記争いのない事実等(第二の一)、証拠(甲四の1ないし3、六、戊一、二、原告本人[一部])及び弁論の全趣旨によれば以下のとおりの事実が認められる。

(一) 第四事故現場付近の概況は別紙図面<4>のとおりである。第四事故現場は東西に通じる国道二五号線(以下この項において「東西道路」というときはこの道路をさす。)に北西から南東に通じる道路が交差して形成されている、信号機によって交通整理の行われている交差点(以下「第四事故交差点」という。)の手前の東西道路右折レーン上である。第四事故現場け近は市街地であり、交通量は頻繁である。

(二) 原告は、被害車両<4>を運転して東西道路を西進し、右折しようとして右折レーンに進入し、折からの渋滞のため前車に続き停止したが、サイドブレーキは引かなかった。被告榮井は、加害車両<4>を運転し、同じく東西道路を西進し、右折レーンに入り、停止中の被害車両<4>に続けて別紙図面<4>記載<1>の位置に自車を停止させた。その後、被告榮井は左側車線に進路変更をしようとして、方向指示器を出したところ、前に停止していた被害車両<4>が進行を開始したために左にハンドルを切って車線変更を開始した。その直後、急停止した被害車両<4>の後部と加害車両<4>の右前角部付近が衝突した。右衝突により被害車両<4>は約一・一メートル移動した。なお、第四事故の際、原告はシートベルトを装着していなかった。第四事故後、原告はアエバ外科病院で診察を受け、頸部挫傷及び腰部打撲と診断された。

2  原告は、右の認定に反し、被害車両は停止した後発進した事実はないと主張し、それに沿う証拠(甲六、原告本人)もあるが、証拠(甲四の2)によれば、衝突前加害車両<4>が前車である被害車両<4>に続いて停止したのは別紙図面<4>の<1>記載の地点であり、衝突直前の時点における被害車両<4>の位置は同図面<ア>記載の地点であり、右<1>記載の地点と<ア>記載の地点は約三メートルであることが認められるところ、証拠(甲四の2、六、戊一、原告本人)によれば、第四事故当時、現場付近は渋滞中で進んでは止まり、進んでは止まるような状態であったことが認められ、かかる状況下で、加害車両<4>がはじめから前車との距離を三メートルもおいて停車することは通常考えられないから、本件衝突の直前における被害車両の位置は、当初の停止位置からすでに発進を開始していたものと推認するのが合理的であり、原告本人の右供述及び甲六の記載はにわかに採用することができない。他に、前記1の認定を左右するに足りる証拠はない。

3  前記1で認定した事故状況に照らすと、本件事故は被告榮井が、停止後、左側車線に進路変更しようとするに際して、左側車線の状況に目を奪われる余り、前方に対する注意が散漫になったことによって生じたものであると認められる。しかしながら、他方、原告にも理由もなく急停止した過失、シートベルトを装着していなかった過失があり、本件事故後診断された傷病名等に照らすと、これらの原告の過失が原告の損害を拡大させる一因になったことが認められる。したがって、第四事故によって原告に生じた損害の全てを被告榮井に負わせるのは妥当性を欠くというべきであり、本件においては前記認定の事故態様及び双方の過失の内容、程度を比較し、過失相殺として第四事故によって原告に生じた全損害から三割を控除するのが相当である。

五  争点5(共同不法行為の成否)について

被告らに対して民法七一九条一項のいわゆる共同不法行為責任を認めるためには、被告ら各自に独自に不法行為の要件が認められることのほか、被告らの各加害行為が客観的に関連し共同していること、すなわち時間的、場所的に接着しており、社会的にみて同一の機会に生じたと認められる必要があると解されるところ、本件第一ないし第四事故はいずれも、発生時間、発生場所が全く別々であり、社会的にみて同一の機会に生じたものとはいえないのであるから、本件各加害行為につき共同不法行為が成立すると解することはできない。したがって、被告大木は第一事故によって原告に発生した損害につき、同際は第二事故によって原告に発生した損害につき、同玄は第三事故によって原告に生じた損害につき、同榮井は第四事故によって原告に生じた損害につきそれぞれ賠償責任を負担することになると解される。

六  争点6(原告の損害)について(円未満切り捨て)

1  第一事故による損害

(一) 治療費 二〇万七二六〇円

(1) 前記争いのない事実等(第二の一)、証拠(甲一の4、二の3、六、丁一、二、三の1、2、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下のとおりの事実が認められ、これを左右するに足る証拠はない。

(ア) 原告は第一事故により、外傷性頸部症候群、腰部打撲の傷害を負ったこと、本件事故後、河内総合病院でまず治療を受け、その後平成五年六月二四日に原告自身の希望により片上外科に転院した。

(イ) 片上外科への転院後はホットパック、薬物処方などの保存療法が主になっており、原告は第二事故発生当時には第一事故による症状は次第に安定に向かいつつあった。

(ウ) 原告は、第二事故により、治りかけていた頸部捻挫及び腰部捻挫の症状が再び悪化し、そのために平成五年鶴見緑地病院での治療を要し、同病院ではまず通院治療を受け、その後第二事故から一〇日あまり経った平成五年八月一二日から入院治療を受けた。ただし、この入院は原告の希望に基づくものであり、しかも入院期間中は主に経過観察とリハビリが行われているに過ぎなかった。

(エ) 第二事故後の症状については、第二事故直後には頸椎硬直、両側項部知覚鈍麻、関節可動域制限あり、知覚障害等の診断がなされていたが、平成五年八月二〇日には、頸部痛低下、頸椎硬直軽度、関節可動域軽度制限との診断がなされるなど徐々に回復に向かい、同年九月一日には本人も調子がよいと述べ、医師も退院を奨める状態となるなど症状の改善がみられ、遅くとも同年九月四日には症状固定の状態となった。

(2) 右に認定の事情に、前記第三の一、二で認定の第一、第二事故の態様、各事故の衝撃の度合い、第一事故と第二事故の間隔がほぼ五〇日間であること、第二事故の症状が事故から三六日で症状固定に至っていることからみて第二事故がなければ原告の第一事故による症状は遅くとも同年八月中旬には固定していたものと考えられることといった事情に第二事故後の原告の症状の推移を合わせ考慮すると、原告の第一事故による症状は平成五年九月四日に症状固定したものであるが、第一事故と相当因果関係を有する原告の治療費は、河内総合病院及び片上外科で要した費用全部と、第二事故後治療を受けた鶴見緑地病院で要した費用(ただし前認定の事実に照らすと、入院治療の必要性は認められないのでその分は除く。)の一割であると認めるのが相当である。

(3) 証拠(甲一の6ないし8)によると、河内総合病院の治療費は六万五三七〇円、片上外科の治療費は一一万五九四〇円であることが認められる。さらに証拠(甲二の5ないし8)によると、平成五年七月三一日から同年九月四日までの間に原告の鶴見緑地病院での治療に要した額は七二万七四二〇円であるが、前記のとおり入院治療の必要性は認められないので入院料相当額四六万七九二〇円(甲二の7、8の入院料欄の合計金額)を控除した二五万九五〇〇円が鶴見緑地病院での通院治療に必要な額であったと認められる。鶴見緑地病院分の二五万九五〇〇円の一割は二万五九五〇円であるので、右に認定した河内総合病院及び片上外科の分と合わせて、原告の第一事故と相当因果関係を有する治療費の額は二〇万七二六〇円となる。

(二) 入院雑費

右(一)で述べたとおり、原告には入院治療の必要性は認められないので、入院雑費の請求は理由がない。

(三) 通院交通費

前記(一)認定の原告の症状に照らし、タクシーによって通院しなければならなかったとまで認められないし、その他の通院方法を採った場合に要する費用についての主張立証もないので、原告の通院交通費の請求は理由がない。

(四) 休業損害 四〇万二九六八円

(1) 証拠(甲五の1ないし3、六、乙三、四、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告は第一事故前は株式会社昌英他に勤務し、運転手として稼働していたこと、原告の第一事故前三か月の一か月あたりの平均収入は少なくとも四五万九六七三円(一日あたり一万五三二二円)であること、原告は第一事故後平成八年三月ころまで就労していないことが認められる。

(2) 前記(一)認定の原告の症状の推移に照らすと、原告は第一事故の翌日から相当治療期間である平成五年九月四日までの八五日間にわたりその労働能力を平均して五割制限されている状態であったと認めるのが相当である。そして、第二事故後の三六日間については前述のとおりその期間に行われた治療のうち第一事故と相当因果関係を有するのは一〇分の一であると認められるので、結局第一事故と相当因果関係を有する原告の休業損害は、以下の計算式のとおり四〇万二九六八円となる。

(計算式)15,322×0.5×49+15,322×0.5×0.1×36=402,968

(五) 慰謝料 三〇万円

前記第三の一認定の第一事故の態様、第一事故による受傷の内容、程度、治療の経過、第一事故と相当因果関係を有する通院期間等本件弁論に現れた一切の事情を考慮し、右金額をもって相当と認める。

(六) 第一事故による損害のまとめ

(1) 被告大木からの支払い

被告大木は、自賠責保険からの支払いの他に、原告に対し見舞金として五万円、治療費・交通費名目で一二万円の合計一七万円を支払った旨を主張するが、見舞金五万円については損害をてん補する性質のものとみることはできず、その余の支払についてはその点を裏付ける証拠はない。

(2) 小括

以上認定のとおり、第一事故と相当因果関係を有する原告の損害は九一万〇二二八円となり、これから前記(第二の一)の自賠責保険からの支払分五四万八四〇二円を控除すると、第一事故によって原告に生じた損害のうち被告大木に負担させるべき分(弁護士費用を除く)は三六万一八二六円となる。

(3) 弁護士費用 三万円

原告が被告大木に対する権利実現のため訴訟を提起、遂行するに際し、弁護士を委任したことは当裁判所に顕著な事実であるところ、事案の内容、立証活動の難易、認容額の程度等本件弁論に現われた一切の事情を考慮して、第一事故と相当因果関係を有する弁護士費用としては右金額をもって相当と認める。

(4) まとめ

(2)に(3)を加えると三九万一八二六円となる。

2  第二事故による損害

(一) 治療費 二三万三五五〇円

前記1(一)認定のとおり、原告は第二事故後鶴見緑地病院で入通院治療を受けたが、入院治療の必要はなく、平成五年九月四日には症状固定したものであり、第二事故後平成五年九月四日までの治療費は、その一〇分の一である二万五九五〇円が第一事故と相当因果関係を有するものと認められる。

そうだとすると、前記1(一)(3)認定の鶴見緑地病院で通院治療に要した費用二五万九五〇〇円のうち第一事故による受傷の治療のために要したものと認められる二万五九五〇円を控除した二三万三五五〇円が第二事故と相当因果関係を有する原告の治療費であると認められる。

(二) 入院雑費 〇円

前記1(一)で述べたとおり、原告には入院治療の必要性は認められないので、入院雑費の請求は理由がない。〇円

(三) 通院交通費

前記1(一)認定の原告の症状に照らし、タクシーによって通院しなければならなかったとまで認められないし、その他の通院方法を採った場合に要する費用についての主張立証もないので、原告の通院交通費の請求は理由がない。

(四) 休業損害 二四万八二一六円

前記1(四)認定のとおり、原告の第一事故前三か月の一か月あたりの平均収入は少なくとも四五万九六七三円(一日あたり一万五三二二円)であること、原告は第二事故後平成八年三月ころまで就労していないこと、原告は第二事故から相当治療期間である平成五年九月四日までの三六日間にわたりその労働能力を平均して五割制限されている状態であったことが認められる。そして、さらに前記1(四)認定のとおり第二事故後の三六日間については前述のとおりその期間に行われた治療のうちその一〇分の一は第一事故と相当因果関係を有するものであると認められるので、第二事故と相当因果関係を有する治療は残りの一〇分の九であったと認めるのが相当である。そうだとすると第二事故と相当因果関係を有する原告の休業損害は、以下の計算式のとおり二四万八二一六円であると認める。

(計算式)15,322×0.5×0.9×36=248,216

(五) 慰謝料 二〇万円

前記第三の二認定の第二事故の態様、第二事故による受傷の内容、程度、治療の経過、第二事故と相当因果関係を有する通院期間等本件弁論に現れた一切の事情を考慮し、右金額をもって相当と認める。

(六) 第二事故による損害のまとめ

以上認定のとおりであるから、第二事故と相当因果関係を有する原告の損害は六八万一七六六円となり、ここから前記認定の第二事故における原告の過失割合一割を控除すると六一万三五八九円となる。しかし、前記(第二の一)のとおり、被告際については既払分が九五万〇四一〇円あるので、既に過払いの状態となっている。したがって、原告の被告際に対する請求はその余の点につき判断するまでもなく理由がない。

3  第三事故による損害

(一) 治療費 三六万八二八〇円

(1) 前記争いのない事実等(第二の一)、証拠(甲三の3ないし8、六[一部]、丁七1、2、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、以下のとおりの事実が認められ、これを左右するに足る証拠はない。

(ア) 原告は、第三事故後、いったん両親宅へ帰ったが、翌日になって吐き気がして体も熱っぽくなったということで、知人につれられて八戸の里病院を受診し、入院治療を受けることになった。

(イ) 入院中、原告はめまい、頸部痛、腰部痛等を訴えてはいたものの、入院直後に行われた脳波検査、CT検査とも異常なしとの所見であり、X線検査所見においても頸椎には異常はなく、腰椎についても変形性の変化が認められたのみであった。そして、九月三〇日の看護記録には自覚症状なしとの記載がなされた。

(ウ) 入院中は、主に検査及び理学療法等の保存的療法が施されたのみで、積極的に症状の改善を目的とした治療は行われていない。

(エ) 原告は、入院二日後の平成五年九月一四日ころから、昼間病室に不在がちになり、無断外出が目立つようになったほか、夜間に病院内をうろうろしたり、夜中の三時半ころにいきなり外出することもあった。さらに一〇月に入ると、勝手にネックカラーを外していることもあった。

(2) 以上認められる事実に、前記第三の三で認定の第三事故の態様を合わせ考慮すると、原告の症状は、詐病とまではいえないものの入院治療の必要性は全くなく、遅くとも平成五年九月末日には症状固定したものと認められる。甲六には、原告が、初診日に医者からすすめられたから入院した旨の記載があるが、カルテ(丁七の1)から窺われる入院中に行われた治療、検査の内容に照らし、甲六の記載は信用することができない。したがって、第三事故と相当因果関係を要する八戸の里病院の治療費は、平成五年九月中の通院治療相当額ということになり、同病院で要した治療費のうち、入院のために要した分及び一〇月一日以降の治療に要した分は第三事故と相当因果関係がないというべきである。

証拠(甲三の3、4)によれば、八戸の里病院において平成五年九月中に原告に対して行われた治療の点数は、合計四万一七二二点であること、そのうち通院治療を受けていれば必要なかった入院時基本診療料、入院時医学管理料の合計点数は、合計二万三六一七点であること、一点単価は二〇円として原告に対して請求されていることが認められる。そうすると、原告が八戸の里病院において同月中に要した治療費は八四万〇六二〇円(文書料含む)であるが、そのうち第三事故と相当因果関係を有するのは右金額から四七万二三四〇円を控除した三六万八二八〇円となる。

(二) 入院雑費 〇円

前記3(一)で述べたとおり、原告には入院治療の必要性は認められないので、原告の入院雑費の請求は理由がない。

(三) 通院交通費 〇円

前記3(一)認定の原告の症状に照らし、タクシーによって通院しなければならなかったとまで認められないし、その他の通院方法を採った場合に要する費用についての主張立証もないので、原告の通院交通費の請求は理由がない。

(四) 休業損害 八万七三三五円

前記1(四)で認定のとおり、原告の第一事故前三か月の一か月あたりの平均収入は少なくとも四五万九六七三円(一日あたり一万五三二二円)であること、原告は第三事故後平成八年三月ころまで就労していないことが認められるところ、原告は第三事故からその相当治療期間である平成五年九月三〇日までの一九日間にわたりその労働能力を平均して三割制限されている状態であったと認めるのが相当であるから、第三事故と相当因果関係を有する原告の休業損害は、以下の計算式のとおり八万七三三五円であると認める。

(計算式)15,322×0.3×19=87,335

(五) 慰謝料 一〇万円

前記第三の三認定の第三事故の態様、第三事故による受傷の内容、程度、治療の経過、第三事故と相当因果関係を有する通院期間等本件弁論に現れた一切の事情を考慮し、右金額をもって相当と認める。

(六) 第三事故による損害のまとめ

(1) 小括

以上認定のとおり、第三事故と相当因果関係を有する原告の損害は五五万五六一五円となり、これから前記認定の原告の過失割合六割を控除すると、第三事故によって原告に生じた損害のうち被告玄に負担させるべき分(弁護士費用を除く)は二二万二二四六円となる。

(2) 弁護士費用 二万円

原告が被告玄に対する権利実現のため訴訟を提起、遂行するに際し、弁護士を委任したことは当裁判所に顕著な事実であるところ、事案の内容、立証活動の難易、認容額の程度等本件弁論に現われた一切の事情を考慮して、第三事故と相当因果関係を有する弁護士費用としては右金額をもって相当と認める。

(3) まとめ

(1)に(2)を加えると二四万二二四六円となる。

4  第四事故による損害

(一) 治療費 七万三八八一円

前記争いのない事実等(第二の一)、前記第三の四で認定の第四事故の態様及び証拠(甲四3、4、六、丁四)によれば、原告は第四事故によって腰部打撲、頸部損傷の傷害を負い、平成六年三月二二日までの一一日間にわたりアエバ外科において通院治療を受け、その治療のために七万三八八一円を支出したことが認められる。

(二) 通院交通費 〇円

右(一)認定の原告の症状に照らし、タクシーによって通院しなければならなかったとまで認められないし、その他の通院方法を採った場合に要する費用についての主張立証もないので、原告の通院交通費の請求は理由がない。

(三) 休業損害 五万〇五六二円

前記1(四)認定のとおり、原告の第一事故前三か月の一か月あたりの平均収入は少なくとも四五万九六七三円(一日あたり一万五三二二円)であること、原告は第四事故後平成八年三月ころまで就労していないことが認められるところ、原告は第三事故からその治療期間である平成六年三月二二日までの一一日間にわたりその労働能力を平均して三割制限されている状態であったと認めるのが相当であるから、第四事故と相当因果関係を有する原告の休業損害は、以下の計算式のとおり五万〇五六二円であると認める。

(計算式)15,322×0.3×11=50,562

(四) 慰謝料 一〇万円

前記第三の四認定の第四事故の態様、第四事故による受傷の内容、程度、治療の経過、第四事故と相当因果関係を有する通院期間等本件弁論に現れた一切の事情を考慮し、右金額をもって相当と認める。

(五) 第四事故による損害のまとめ

(1) 小括

以上認定のとおり、第四事故と相当因果関係を有する原告の損害は二二万四四四三円となり、これから前記認定の原告の過失割合三割を控除し、さらに前記(第二の一)記載の既払額合計七万三八八一円を控除すると、第四事故によって原告に生じた損害のうち被告榮井に負担させるべき分(弁護士費用を除く)は八万三二二九円となる。

(2) 弁護士費用 一万円

原告が被告榮井に対する権利実現のため訴訟を提起、遂行するに際し、弁護士を委任したことは当裁判所に顕著な事実であるところ、事案の内容、立証活動の難易、認容額の程度等本件弁論に現われた一切の事情を考慮して、第四事故と相当因果関係を有する弁護士費用としては右金額をもって相当と認める。

(3) まとめ

(1)に(2)を加えると九万三二二九円となる。

七  まとめ

以上のとおりであるから、原告の請求は、被告大木に対して金三九万一八二六円及びこれに対する不法行為日の後である平成六年三月一二日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを、被告玄に対して金二四万二二四六円及びこれに対する不法行為日の後である平成六年三月一二日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを、被告榮井に対して金九万三二二九円及びこれに対する不法行為日である平成六年三月一二日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度でそれぞれ理由があり、被告際に対する請求は理由がない。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 三浦潤 山口浩司 大須賀寛之)

別紙図面<1> 交通事故現場見取図

別紙図面<2> 交通事故現場見取図

別紙図面<3> 交通事故現場見取図

別紙図面<4> 交通事故現場見取図

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